ゴーアラウンドした機体はどこへ?
以上が一般的に発生するゴーアラウンドの要因です。管制官からゴーアラウンドを指示されるか、パイロットが着陸は危険と判断した場合、パイロットは着陸を中止し、上昇に転じます。その後、再び着陸進入経路をたどり直し、滑走路へ向かっていきます。
では、着陸を中止してから着陸進入経路に戻るまで、どのような飛行経路をたどるのでしょうか?
ゴーアラウンドを始める地点
管制官からゴーアラウンドを指示される、もしくはパイロットが着陸は危険と判断するタイミングによって、ゴーアラウンドを始める地点も異なります。
例えば、先行していた航空機から滑走路上落下物の報告があり、滑走路が閉鎖された場合は、滑走路の手前までたどり着く前に管制官からゴーアラウンドを指示され、着陸進入経路から外れます。これは特に「進入復行(Missed Approach)」とも言います。
一方、滑走路の手前までたどり着いたものの、視界不良で滑走路が見えなかったり、先行する着陸機がまだ滑走路上にいる場合は、滑走路の手前でゴーアラウンドを始め、空港上空で旋回して再び着陸進入経路を目指します。
あるいは、着陸直前に滑走路上に落下物を発見したり、強風に煽られた場合は、進路そのままに滑走路の上空を低空飛行で通過し、通過後に旋回して再び着陸進入経路を目指します。
滑走路までたどり着いてしまってからゴーアラウンドすることになった場合は、かなり低高度まで降下しているため、ゴーアラウンドと同時に旋回してしまうと、管制塔やターミナルビルなどの空港設備、空港周辺の建造物に異常接近して危険なため、滑走路を低空飛行で通過しながら上昇して、高度を稼いでから旋回していきます。
また、強風に煽られたり、高高度から降下してきたがために着陸地点が滑走路の中央付近まで行ってしまった場合、ゴーアラウンドして再び上昇します。車輪が接地したとしても、タッチ・アンド・ゴーとは言わずゴーアラウンドの扱いになり、進路を維持したまま上昇した後、旋回して着陸進入経路を目指します。
ゴーアラウンドの開始地点は、タイミングによってマチマチですし、その時の気象条件や混雑状況、滑走路への進入方向や空港ごとの特性によって、どこで旋回を開始するかは変わってきてしまうため、「着陸態勢から上昇に転じる」以外は、一概にこの通りに飛行するとは言えないのが実情です。
ゴーアラウンドを始めてから着陸進入経路に戻るまで
どの地点でゴーアラウンドを始めたとしても、最終的には空港から少し離れた地点にある指定の場所で旋回待機を行うか、着陸進入経路の入り口まで戻ります。ゴーアラウンドした航空機が旋回待機を行う地点や着陸進入経路の入り口までの飛行経路は、着陸進入経路同様、事前に決められています。
これは空港周辺の地形や、離陸機との経路の干渉などを考慮して設けられています。その結果、この飛行経路は離陸機のルートとほぼ同じになることもあり、離陸機との混同を避けるために、ゴーアラウンドした着陸機は全て、一度離陸機担当の管制官に引き継がれます。
旋回待機を行う地点や着陸進入経路の入り口まで来たら、再び着陸機担当の管制官に引き継がれ、滑走路が閉鎖されているならば運用再開まで旋回待機、滑走路が閉鎖されているわけではないならば他の航空機と間隔調整の上、再び着陸進入経路をたどって滑走路を目指します。
東京・羽田空港の場合、着陸する滑走路や進入する方向、気象条件や混雑状況によって、南の川崎市・浦賀水道方面に向かうか、北の東京都心・埼玉県方面に向かうかが分かれます。
着陸進入経路は極力都市部を避けるルートになっていますが、ゴーアラウンド後の飛行経路はそうも言っていられず、山間部を避け平野部か海上を飛行するルートになっています。その結果、時々ゴーアラウンドした機体が東京都心の上空を通過していく光景が見られるというわけです。
決して臆することはない「危険回避の操作」
都市部にある大阪・伊丹空港や福岡空港の周辺ではこのような光景はいくらか見慣れているかと思いますが、普段ジェット機が飛び交うことがない東京都心で、低空飛行するジェット機を目撃すると、不安になる人もいらっしゃるかと思います。
ただ、ゴーアラウンドした航空機は、決められた手順で決められたルートを飛行しているだけですので、過度に怯える必要はありません。
都市部の上空を航空機が飛び交うのは、世界的に何も珍しいことではなく、今後の日本の空の発展次第では、それがいつか当たり前の光景になるかもしれませんね。
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