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第二のエンジン?成田空港全日空機発煙の原因「APU」とは

2018年5月21日、東京・成田国際空港で、出発直前の香港行き ANA 全日空 NH809便(ANA系列のエアージャパン運航) ボーイング767-300ER JA625Aの機内に煙が充満し、乗客が避難するトラブルがありました。

APU(補助動力装置)の作動油が何らかの故障で漏れ、霧状になって機内に流れ込んだことが原因とみられています。(2018年5月22日 12:00現在)

今回は、このニュースを聞いて「APUって何だろう?」と思った方へ、簡単なまとめ記事を書かせていただきました。

APUはどこにある?

APUは、Auxiliary Power Unitの略で、補助動力装置と訳します。タイトルにある通り、要は小さなエンジンです。「エンジン」と書いてあるからには、主翼の下に付いているエンジンと似たような働きをしますが、用途は全く違うものです。

まずは下の写真をご覧ください。

Q.この中にAPUが写っています。どこでしょう?

これはJAL 日本航空のボーイング737-800の機体後部を撮影した写真を拡大したものです。

いきなりですが、クイズです。この写真の中に、実はAPU(補助動力装置)が写っています。さて、どこでしょう?

主翼下に付いているものとは違うエンジン…というヒントだけでは、この写真の中からAPUを探し出すのは、ちょっと難しいかもしれません。主翼下以外にエンジンのような構造物は見受けられないからです。また、機体後方にも突起やら窪みやらが多数見受けられ、そもそもどれがどれなのか、なかなか見分けがつかないかもしれません。

ただ、やはりそこは「エンジン」なので、この写真の中ではそれほど地味な存在ではないはずです。一番目に付くもの(これも卑猥に聞こえたらゴメンナサイ)がヒントです。あまり深く考えずに、目に留まったものが答えかもしれませんよ。

それでは正解発表です。正解はコチラ↓

A.赤い丸で囲まれた穴の部分にAPUがあります

正解は、画像内の赤い丸で囲まれた、穴の開いた部分です。ここはAPUで発生した熱を逃がす排気口になっていて、この中にAPUが内蔵されています。

ちなみに、その下にある突起は「テールスキッド」と呼ばれ、離着陸時に機首を上げすぎて機体後部が滑走路に擦り付けられた場合、機体に衝撃やダメージがダイレクトに伝わらないようにする機構です。テールスキッドの右下にあるフタが開いているところは「アウトフロー・バルブ」と呼ばれ、上空で与圧された機内の空気の排気口です。

APUの働きとメリット

APUの大まかな場所が分かったところで、どのような働きをしているのか、見ていきましょう。

前章冒頭で述べた通り、APUはつまるところ、小さなエンジンですので、主翼下に付いているエンジンと似たような働きをします。

具体的には、APUが発電機の役割を担い、機内に電気を送ることで、客室の照明をつけたり、コックピットの計器の電源を入れたり、空調を動かすことができます。

それだけではなく、主翼下のメインエンジンのサポートの役割も担っています。

飛行機の巨大なジェットエンジンを動かすとき、たくさんの空気を必要とします。

冬場のとても寒い日などは、自動車のエンジンがかかりにくくなるのと同じように、飛行機のエンジンも動かすには大きな力が必要です。

また、山岳地帯など気圧が低い高地では、酸素濃度が薄く、飛行機のエンジンを動かすには足りません。そこでAPUが行っているのは、「空気を圧縮する」という作業です。圧縮した空気は、飛行機が出発する際、エンジンを動かすための大きな力になります。

さらに、飛行中に万が一メインエンジンが止まってしまうような緊急事態になった場合、必要最低限の計器の電源や機内の照明・与圧を維持するため、メインエンジンが担っている発電の役割を代行したり、メインエンジンが再始動できるよう、圧縮した空気を送り込む役割が生かされます。

APUのデメリットと講じられている改善策

機体後方から出る排気熱で陽炎が見えます

空港に止まっている航空機は、このAPUを回すことで、機内に電気を送り、空気を圧縮するという作業を行っていますが、これには大量の熱が伴います。

そのため、機体後部の排気口から高温の熱風(排気ガス)が排出されますが、飛行機越しに空港から遠くの風景を眺めると、メラメラと揺れているような陽炎が見られたりします。

また、APUは小さなエンジンですので、回転させることで排気ガスのほかに、騒音という問題も起こります。

駐機場に止まっていて、メインエンジンが止まっている飛行機からも、エンジンの唸るような作動音が聞こえるのは、APUが作動しているからです。

特に大規模な空港だと、何機も止まっている航空機から一斉にAPUの作動音が響いてきたら、展望デッキにいる一般客以上に、地上で作業をしているスタッフにとっては、耐えがたいものとなります。

さらに、APUはメインエンジンの役割を代行したり、圧縮した空気を送り込んで動かしやすくする役割があると話しましたが、「じゃあAPUはどうやって動かすの?」という疑問が生じます。

専門の車両(電源車)がない小規模な空港や緊急事態に陥った飛行中でもAPUを起動させるために必要なのは、航空機に搭載されているバッテリーです。

機種によって、容量から数まで多彩なバッテリーのバリエーションがありますが、どれをとっても、バッテリーが切れてしまえば、電源を供給することはできません。

大規模な空港な場合、このバッテリーが充電できるように、電力を供給する専門の車両(電源車)が用意されていますが、そもそも「機内に電力を供給するAPUを動かすバッテリーを充電する」ために「電力を供給する」という行為自体が、本末転倒になっているのがお判りでしょうか?

近年では日本国内でも、東京・成田国際空港を筆頭に、APUを使用しない代わりに、地上の設備や電源を供給する専門の車両(電源車)から取り込んだ電力を、直接機内に流す方式への切り替えが進んでいます。

主翼の下に付いた巨大なジェットエンジンに代わって、機体の後ろの小さな部分で発電や空気の圧縮を行うAPU(補助動力装置)。

デメリットがあるとはいえ決して不必要なものではなく、近年では国際的に見ても、非常時に効力を発揮するという点が重要視されています。

地上設備への移行に伴い、日に日に影が薄くなってしまっている実情もありますが、機体後部のお尻を見たら「ここがAPUの排気口!」というのが分かれば、展望デッキからの眺めが1~2割は面白くなるのではないかと思います。

おまけ:機種によって違うAPUの排気口

上記の例で取り扱ったのはボーイング737のAPUの排気口でした。実は、機種によってAPUの排気口の形状が異なるのを、ご存知でしょうか?

共通点としては、どれも機体後部にあり穴のようになっている部分がAPUの排気口になっています。

かなり似通った形状もありますが、APUの排気口で機種の違いがある程度判別できるので、空港で見かけた飛行機の機種が分からない…といった時には、この手を使ってみるのもおススメですよ。

ボーイング747のAPUの排気口

ボーイング767のAPUの排気口

 

 

ボーイング777のAPUの排気口

ボーイング787のAPUの排気口

エアバスA320ファミリーのAPUの排気口

エアバスA330/A340のAPUの排気口

エアバスA350のAPUの排気口

エアバスA380のAPUの排気口

エンブラエルERJのAPUの排気口

ボンバルディアCRJのAPUの排気口

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